2020年4月21日(米国時間20日)にWTI原油価格が史上初のマイナスに転じました。この状況を受け、現況と先行き見通しについてアップデートしました。
現在原油価格は過去最大の下げ幅で下落しております
そんな原油価格WTIが一体なにものか解説していきます!
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WTIってなに?
WTIはWest Texas Intermediateの略称で、原油価格の代表格と言われています
WTIは北米での原油市場のマーカー原油です
主要な原油市場はいくつかあり、その一つがWTIというわけです
WTI 👉 北米市場
北海ブレント 👉 欧州市場
ドバイ・オマーン 👉 アジア市場
バレルってなに?
ニュースでよく耳にする『〇〇百万バレル』、あのバレルってなんなのでしょう?
石油の計量に使われる単位が『バレル』です
バレルは英語で『樽』という意味です
昔は石油を樽で輸送していたため、バレルという単位はその名残です
石油の生産量は日量当たりのバレルで表されるのが一般的です
1バレルは159リットルです!
OPECってなに?

これまたニュースでよく耳にする『OPEC会合が〜』、OPECってなにものでしょうか?
OPECはOrganization of the Petroleum Exporting Countriesの略です
日本語では『石油輸出国機構』といいます
1960年9月に結成された産油国が集まる団体です
サウジアラビア、イラン、イラク、ベネズエラ、クウェートの5カ国からスタートしました
OPECには各国が加盟と加盟停止を繰り返しており、現在下記の13カ国で構成されています
サウジアラビア🇸🇦 | イラン🇮🇷 |
イラク🇮🇶 | ベネズエラ🇻🇪 |
クウェート🇰🇼 | リビア🇱🇾 |
アラブ首長国連邦🇦🇪 | アルジェリア🇩🇿 |
ナイジェリア🇳🇬 | ガボン🇬🇦 |
アンゴラ🇦🇴 | 赤道ギニア🇬🇶 |
コンゴ共和国🇨🇬 |
これまでエクアドルも OPECに参加していたものの、2020年1月に脱退しました
経済再建に向け石油の増産を計画してたエクアドルは、OPECが進める協調減産を受け入れらなかったことが理由でした
OPECプラスもあるの?
近年OPECは影響力を弱めており、一方で影響力を強めているのが『OPECプラス』です
OPEC非加盟国も参加している組織です
エクアドルが脱退するきっかけとなった減産強調も、ロシアなどのOPEC非加盟国と進める動きによるものでした
主な産油国のうちOPECに参加していないのは下記のような国です👇
米国🇺🇸 | ロシア🇷🇺 |
メキシコ🇲🇽 | 中国🇨🇳 |
ノルウェー🇳🇴 | オマーン🇴🇲 |
シェールオイルってなに?

シェールオイルとは、油を含む岩石から取り出した液状もしくはガス状の炭化水素を処理して得られる合成石油です
地中深くの頁岩(けつがん)層に埋まっているため、採掘技術が進歩した2000年代からようやく生産され始めました
米国やカナダで生産され始めましたが、採算コストは中東産原油に比べると高いです
しかし近年生産効率は上がってきていると言われています
米国でシェールオイルが得られるようになると、米国での原油需要が低下し、余剰となった中東産原油が他の消費国に流れその需給が変化すると考えられます
原油価格が騰落するのはなぜ?

原油価格も株式と同じように需要と供給の関係で価格が決まります
原油価格は価格管理が適切にされていないと、暴落しやすい性質があります
原油生産は油田開発コストが膨大で、償却費と金利の負担が大きいという特徴があります
つまり生産業者は投下した資本を早急に回収したいと考えているわけです
生産施設が完成してしまえば、温泉のように原油が湧き出てくるため、稼働率にかかわらず生産コストは一定です
よって生産業者は、生産量を最大にして効率よく稼ごうと考えるのが普通です
しかし生産量を増やせば供給過剰に陥るため、価格の下落を招いてしまいます
価格が下落すれば生産業者の収入は減りますから、さらに増産を招き、増産と価格下落の負のスパイラルに陥ってしまいます
このような流れで原油価格が暴落すると言われております
現在の原油価格

直近のWTIは、1バレル19ドル代に突入するなど極めて原油安の状態が続いています
新型コロナの感染拡大が進み、景気の先行き不安から原油の利用が落ち込むなどの見通しが原因と考えられます
このような原油安は、原油の生産業者の収益性の悪化につながり、将来的には原油の安定供給にも支障が出る可能性が考えられています
またシェールオイルはその生産効率は上がっているものの、原油との損益分岐点が1バレル50ドル前後にあると考えられ、原油安はシェールオイル業者の経営悪化を招く可能性も考えられます
シェールオイルの生産の盛んな米国では、トランプ大統領が何らかの手を打ってくる可能性も高いと考えられ、「米国内の多数のエネルギー関連の雇用を救う」という趣旨のツイートも発信しています
OPECプラスは強調減産を発表し、日量970万バレルの減産を2ヶ月にわたり実施することも発表しております
今後の経済状況と原油市場の動向から目が離せない状況です!
WTI原油価格が史上初のマイナスを記録!
4月20日、米国商業取引所で原油価格がマイナスに転じました
マイナスの価格は市場初めての記録となります
米国のマーカー原油であるWTIは、20日をマイナス37.63ドルで取引終了しました
1バレルの価格がマイナスということは、『原油を買うと油だけではなくお金もついてくる』ということを表しています
つまり『お金払うから原油引き取って』ということを意味しています
新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動はストップ!
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の状況は深刻で、日本でも既に実施している通り外出自粛など、ありとあらゆる経済活動がストップしています
とうぜん交通機関のストップや工場の稼働停止など、とにかく原油の需要が枯渇しきっている状況です
原油の生産は止められない
既に述べたとおり、原油の生産施設は一度完成すれば、まるで温泉のように原油が湧き出してきます
湧き出す原油が湧き出さないように生産を止めてしまうと、再稼働にコストがかかってしまうため簡単に原油の生産を止めるわけにはいきません
湯水のように湧き出る原油に対し、原油の需要はコロナショックにより激減しました
つまり地球上に油が溢れかえっている状況で、油の引き取り手を探している状況が原油価格に反映された結果WTIの価格暴落が起こったと考えられます
下落したのはWTIの5月物
今回ニュースになっている原油価格の下落は5月物の取引価格
つまり5月の原油の貯蔵施設が満杯になる懸念があり、市場が上述の通りの反応を示した格好です
6月物についても下落基調にはありますが、1バレルあたり20ドル前後で取引されています
原油というのは先物取引であるため、4月に5月分の取引を行っています
そして4月21日が5月物の最終取引日であり、原油の貯蔵懸念からトレーダーは商品を手放したいとの思惑が働いたと考えられます
今後の見通しについて
欧州ではロックダウンの期間が延長されるなど、実体の経済活動が回復するにはまだ時間がかかると考えられます
日本も例外ではなく、本当にGW明けに経済活動が再開するかは不透明です
このような状況が続けば、WTI原油の6月物についても今回同様に暴落を迎える可能性があると考えられます
結局は原油を使った活動が再開されなければ、原油の行き場がなく貯蔵できなくなってしまうからです
米国のトランプ大統領は、国内備蓄のために原油を購入することを表明しています
しかし米国国内の貯蔵施設にも限度がありますから、貯蔵が満杯となればますます原油の行き場がなくなるという懸念は一層強くなると思われます
米国にはオクラホマ州のクッシングに原油貯蔵施設があり、4週間前に50%程度であった貯蔵率が現在は69%まで増加しています
一方で世界的な原油需要は30%減少していると報じられています
しばらくは原油価格から目が離せない状況が続きそうな感じです