怒涛の連騰を続けていたアンジェス(4563)の株価が、5月8日に大暴落しました。前日よりも200円近く高く寄り付いた株価は開始30分まで怒涛の勢いで上昇し、2455円という高値をつけました。1分足で大陽線の出現により2455円をつけた株価は、すぐにかぶせの大陰線が出現したのを皮切りに、一気に急落し、ストップ安で1日の取引を終えました。
このようなテーマ株の大相場について考えることを解説します。
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波に乗れると利益は大きい、逆も然り
アンジェスの今回の大相場は、新型コロナウイルスCOVID-19のDNAワクチン開発の思惑によるものです。世界的な感染拡大により経済活動が大きく制限される中、感染の完全な終息はワクチン開発が完了することでしか達成できないという考え方もあり、世界的なワクチン完成が待たれている状況です。そのためアンジェスのDNAワクチン開発に注目が集まり大相場を形成しました。
上昇相場では短期間で利益がでやすい
このような大相場では、急速に綺麗な右肩上がりのチャートを形成するため、その波に乗れれば短期間で莫大な利益を得ることができます。期待が期待を呼び、買いが買いを呼ぶため、『ふるい落とし』などの小さな急落に動じなければ、多くの人が莫大な利益を得られる相場となります。
バブル崩壊による急落は怖い
膨らみすぎた期待はやがて弾け、買いと売りの勢いが逆転すると、相場は下落に転じます。会社のバリュエーションを無視して上がり続けてきた株価の拠り所は、『買いが買いを呼ぶ』という期待値だけです。その拠り所を失う、つまり『買いが買いを呼ばなく』なれば、待っているのは『売りが売りを呼ぶ』展開です。
期待値で買われることに期待した投資家にとって、急落は予想外の展開で、一気に損失を抱えることとなるため、『損切り』覚悟で持ち株を売却します。売りが加速すれば、損失を抱える投資家が次第に増えるため、同様に『損切り』をせざるを得ない展開となってしまいまう。
アンジェスの株価
5月8日の9時30分は、まさにこのバブルがはじけた瞬間でした。その後は場中に売りが殺到し、連続約定気配が表示される場面が複数回ありました。その後、一時的に株価は反発高を示す場面もありましたが、結局は売りが売りを呼ぶ展開で、終わってみれば500円安のストップ安水準での取引終了となりました。
このような相場に思うこと
このような相場に僕のような初心者が参加する場合、株価上昇の初動を捕らえられなければ、基本的には損をするという覚悟でいなければなりません。結局は、先行者に優位性があり、後からイナゴのように参加すれば不利な戦いを強いられるだけです。
初動に乗り欲を出さずに利確できるか
アンジェスは3月5日にCOVID-19のDNAワクチンの開発に着手するというプレスリリースを出しました。もともとHGF治療の分野においてDNAワクチンの上市経験がある会社であり、この技術をコロナウイルス感染拡大に向けた製品戦略に応用するという発表でした。
この発表の翌日時点での株価は、前日比+100円の607円ストップ高水準でした。その後じわじわと100円ほど下げる展開があり、500円付近まで株価の調整があり、この時点の初動に乗れるかどうかが、先行者としてのポジション上大事であったと思います。
引用元:Kabutanホームページ(アンジェス)
その後会社の継続的なプレスリリースにより、ワクチンの開発状況が更新され、株価は見る見るうちに上昇し、わずか2ヶ月弱で2000円を突破し、実に4倍の株価上昇を見せました。
初動に乗り、しっかりと利確できれば莫大な利益を得られる大相場であることが分かります。
バリュエーション指標は参加の余地なし
テーマ株にバリュエーションは関係ないですが、念のため確認してみます。
赤字企業であるためPERの算出はできませんので、会社の解散価値を表すPBRを確認しました。PBRは5月8日の終値水準でも12倍以上あります。通常1.5倍程度、割安株であれば1倍を切るような指標ですが、遥かに高値を示しており、いかに期待感が先行しているかが分かります。
過去に下のような解析をしたことがあります👇

会社の収益性の指標ROEと割安度指標のPER、PBRの関係を図時しています。アンジェスのROEは2019年で-38.2%、上述の通りPER算出不能、PBRは12倍と上の散布図にはプロットできないですが、少なくとも右下の『過熱感あり』に近い特徴を持っています。
このような銘柄では会社の収益性に対し、期待値だけが先行しており、株価の急落がおこると、売りが売りを呼ぶ展開が避けられなくなってしまいます。

同様の相場は過去にも
同じような相場は過去にもありました。ただ今回の急落の行く末は神のみぞ知るため、どのような推移を辿るかは分からず、単なる調整であったという可能性もあります。とはいえ、一つの参考として他企業の例も確認しておきます。
レカム(3323)
引用元:Kabutanホームページ(レカム)
レカム(3323)は、2017年12月の110円ほどの株価がわずか1ヶ月ほどで最高値553円をつけました。これは中国子会社のレカムビジネスソリューションズがに中国の新興市場に上場するという思惑に先行した上げでした。非常に短期間で株価が5倍上昇するという相場でした。
553円の高値はストップ高水準でしたが、同日に突如株価は急落、売りが売りを呼び、終わってみればストップ安水準での取引終了となりました。その後も株価は小さな反発を見せるもののズルズルと株価は下落し、現在は急騰前と同水準の90円の株価となっております。
ワークマン(7564)
一方でグロース株の代表格であるワークマンにおいても同様の急落がありました。
引用元:Kabutanホームページ(ワークマン)
グングンと右肩上がりの成長を続けるワークマンの株価は、わずか1ヶ月で1.5倍に成長しましたが、10月16日に高値9650円をつけたあと、同日に8000円の安値まで急落をしました。その後数日下落する展開があり、再び株価は上昇を続ける結果になりました。
さいごに
コロナ相場も相まって、DNAワクチン開発に沸くアンジェスの株価と、直近の急落についての考えを述べました。個人投資家で投資の初心者であれば、このようなバブルの様相を呈している銘柄は、初動に乗れているか、そして欲を出さずに利確できるかが大事です。
一方で、初心者にとって理性のコントロールは難しく、バブル相場では『もっと伸びる』、『まだ行ける』と思ってしまうのが性です。そしてバブルが弾けると売りが売りを呼ぶ展開に恐怖を感じ、損切りをすることも少なくありません。
しっかりと銘柄の分析をして、負けない戦いができるような投資家になりたいと思うばかりです。何か皆さんの参考になれば幸いです。
* 本記事は個人の考えを述べたものであると同時に特定の銘柄を推奨するようなものではありません、投資の判断はご自身でお願いいたします