株式投資の基本は安い時に買い、高い時に売ることです。しかし基本を分かっていながら、テーマ株を買ったり上昇株を買ったりしてしまいます。
上昇相場では安心して買い進め、下落相場では恐怖を感じて割安株を購入することができません。これは自分の投資判断基準が曖昧で、安心感を相場に求めていることが原因です。
この記事では、買い時と売り時の判断に役立つ株価指標として、PER、PBR、ROEを解説します。
※本記事で紹介する内容は個人の見解を示したものです、投資は自己責任でお願いします
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PER:株価収益率
PERとはPrice Earning Ratioの略で、日本語では『株価収益率』と呼びます。『現在の株価』と『1株あたりの当期純利益』の乖離を表し、株価の割安度の判断に役立ちます。

『一株あたりの当期純利益』は過去の記事でも紹介した指標です。例えば一株あたりの当期純利益が300円の企業の株を、株価3000円で買うとPERは10倍です。
会社は株主に3000円を投資してもらい、その10%の利益(300円)を生み出しています。投資額の3000円を利益で稼ぐには10年かかる計算となります。これがPERの意味することで、株価と利益がどれくらい差があるかを表しています。
東証一部の銘柄からデータが取得できた1880銘柄についてPERの分布を示しました。横軸にPERの倍率を、縦軸に銘柄数を示しています。

パラメータ | PER(倍) |
平均 | 19.6 |
最小値 | 0.68 |
中央値 | 11.3 |
最大値 | 855.8 |
PERが5〜20倍の企業が多いことがわかります。また856倍と極めて高い値を示す企業もありました。
PERは企業の純利益を用いて算出するため、今後も純利益の成長が見込める場合、実績ベースではPERが高くなる傾向にあります。つまりPERは成長に対する期待の表れと考えることができます。この傾向はグロース株に強いです。
一般に、大きな成長はないが業績は安定している場合、PERは15倍前後を示すことが多いです。よって僕はこの水準を下回る場合を割安と見なしています
PBR:株価純資産倍率
PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、日本語では『株価純資産倍率』と呼びます。企業が解散する時、既存株主は余った財産を受け取ることができます。
これは株主の権利の一つであり、『残余財産分配請求権』と呼ばれています。そして『現在の株価』と『会社が解散する時に受け取れる財産』の乖離を表すのがPBRです。

PBRが1倍とは現在の株価と企業が解散した時に株主が受け取れる金額が同じということです。逆に1倍を割れば、現在の株価が企業解散時にもらえる金額より安いことを意味します。
東証一部の銘柄からデータが取得できた1880銘柄についてPBRの分布を示しました。横軸にPBRの倍率を、縦軸に銘柄数を示しています。

パラメータ | PER(倍) |
平均 | 1.5 |
最小値 | 0.090 |
中央値 | 0.84 |
最大値 | 29 |
1倍を下回る企業が多く、最小値では0.09という企業もありました。銀行株では PBRが非常に低い傾向を示しています。
この理由はいくつかあり、解散時の財産価値が低く見積もられていることがその一つです。銀行が解散する場合、融資先の経営悪化など本来の資産価値が毀損していることがあるためです。
このようにPBR計算に用いる解散価値はあくまでも見積もりであり、保証されたものではないので注意が必要です。PBRは2倍以下を割安とみており、1倍を下回れば下値の目処は低いと考えています。
ROE:自己資本利益率
ROEとはReturn On Equityの略で、日本語では『自己資本利益率』と呼びます。株主から集めた資本を活用してどのくらい上手く稼いだかを表す指標です。

つまりROEが高ければ高いほど、上手く利益を出しているということです。ROEは株主にどれくらいの利益のリターンがあるかを表しているので、重要視する投資家が多いです。
東証一部の銘柄からデータが取得できた1880銘柄についてROEの分布を示しました。横軸にROEを、縦軸に銘柄数を示しています。

パラメータ | ROE(%) |
平均 | 9.9 |
最小値 | 0.20 |
中央値 | 8.4 |
最大値 | 63 |
平均で9.9%、中央値で8.4%となりました。最も高い企業では63%となりました、驚異的な数字です。
高いROEには注意すべき点があります。自己資本が極めて小さい時にROEが大きくなってしまうという点です。

会社が利益を出すためには、商品を作って販売しなければなりません。商品を作るためには設備投資をして資産(工場やお店)を手に入れなければなりません。資産を買うために必要なのがお金ですが、このお金は全てが自己資本ではありません。
会社は銀行からの借入や社債の発行によりお金を借りることができます。これは将来返却する必要のあるお金で、他人資本(負債)とよびます。
つまり、資産 = 自己資本 + 他人資本(負債)となります

自己資本に対し、資産が何倍あるかを示した値はレバレッジと呼ばれます自己資本に他人資本を加えることでレバレッジをかければ、事業を大きく展開することができます。
一方で負債をたくさんするということは、資産に占める自己資本の割合を低下させることにつながります。そして自己資本が小さくなれば、自然とROEは高くなります。
このようなトリックで、見かけ上ROEが高く算出される場合があります。このような理由から、ROEを見るときは、合わせて自己資本比率を見る方が良いでしょう。ROEが10%を超えていれば稼ぐ力は十分にあるだろうと考えています
おわりに
PER、PBR、ROEについて算出方法と指標の意味について解説しました。業界によってもこれらの値の適正値は変わります。異なる業界同士で比較する場合は、値を直接比較しないように気をつけましょう。
業界に左右される値ではありますが、僕の投資判断基準をまとめると以下のとおりです。
PER(倍) | PBR(倍) | ROE(%) | |
基準 | 15倍以下 | 2倍以下 | 10%以上 |
これらの指標を活用して伸びる銘柄を安い時に買い、高い時に売りたいものです。一筋縄ではいかないのが相場なのですがね・・・悲しい
以上、銘柄のバリュエーション分析に参考になれば幸いです!
* 本記事は個人の考えを示したものです、投資の判断はご自身でお願いいたします